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Findoryに生命維持装置

アメリカのパーソナライズドニュースサービス、Findoryが事実上お蔵入りとの記事。
このサービスは、amazonのレコメンデーション機能のニュース版という感じで、読者の購読特性によって、読みたいであろう記事をレコメンドしていくというもの。制作者のブログによると、「新たな方向性を探っていて、いろいろアイディアは出たけど、やる気にならなかった」とのこと。ただ起業家らしく「FindoryがGoogleやMS、AOLに影響を与えた。これは誇らしいことだ」とも述べている。これに対して、TechCrunch日本語版では

今回の件もまた、オンラインニュースの分野が供給過剰気味だという兆候のひとつだろう。新しいスタートアップは、よほど抜きん出たテクノロジーがないと駆動力を発揮することはできそうにない。

と分析している。

ここで「こんなサービスでも止めちゃうくらいなんだから、日本の新聞社サイトなんて」とか書いてみても面白くないわけで。それよりも、パーソナライズドサービスやソーシャルブックマークなど、ニュースの編集を機械、もしくは多くの人にお任せすることの是非を考えてみたい。

いきなりで恐縮なのだが、まずはニュースから離れて、amazonのレコメンデーションから考えてみたい。私がamazonのレコメンデーションで本を買うのは、「この本を買った人はこんな本も買っています」という項目だけだ。なぜかというと、しばしば「これって何の関係があるの」という本が混ざっていることがあるから。トップページやメールでくるレコメンデーションを「直球」と表現するなら、「この本を〜」は「変化球」という感じだろうか。この変化球は多種多様な人の行動からたまたま導きだされたためだろうか、機械がその人や似たような人の購買特性から真っ正直にレコメンドした場合には出てこない。

これをニュースのパーソナライズドサービスに当てはめても、同じ。直球ばかりでは飽きるのだ。私が整理記者時代心がけていたのは、担当面のどこかに変化球を混ぜることだった。特に直球記事が多い国内政治面の時には、ちょっと面白そうな政界記事を使って、いかに見出しとレイアウトで変化球を投げるかということばかり考えていた。そうでもしなければ、誰も国内政治面なんて読まないと思ったからだ。ちゃんと使っていないので推測でしかないが、このFindoryもどちらかというと直球が多かったのだと思う(もちろん問題はそれだけではなくて、例によってマネタイズが難しかったことも一因だと思う)。

それでは、「はてブ」のような人力によるソーシャルブックマークはどうか。こちらの場合も残念ながら、結果的には同じだ。はてブも開設当初は硬軟が程よく混ざった面白いサイトだった。しかし今はどうだろう。しばしば「衆愚化」などと形容されるように、面白さの源泉であったバランスが崩れてしまったようだ。なんというか、変化球ばかりで飽きてしまうという感じ。結局はamazonで「リスト」を見るように、トップページを横目に見ながら、過去フィーリングがあった人のブクマを見ることになる。

「硬軟混ざった情報源」という点においては、新聞というのはなかなか優秀な媒体だ。新聞記事の編集者は毎日違うので、少しづつだがレイアウトも見出しの付け方も、記事扱いの軽重も違う。昔の私のように妙なやつもいれば、NHKに頼って価値判断しちゃうような小心者もいる。その辺が楽しめるようになると、新聞もちょっとは面白くなる。しかし、なぜかネットになるとそのよさが死んでしまうのが、新聞社サイトの不思議なところだ。いまそれが実現できているように思うのは、情報の提供先である「Yahoo! Japanのトピックス」だけ、というのは皮肉以外の何者でもない。


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