「見える化」は危険な言葉〜わかりやすい言葉、わかった気にさせる言

 新聞記者時代から気にはしていたことなのですが、最近特に気になるのは「言葉」。もしかすると、単語とかフレーズとかと言い換えたほうが、よりニュアンスが伝わるかもしれません。とりあえず、以下の2点は特に気にしてます。


 まず当然のことですが「難しい言葉」「横文字フレーズ」を使わないこと。商売柄、横文字フレーズは必ず出てくるし、同僚と話す分にはむしろ好都合な場合もあります。ただ、得意とする分野が違う人やお客さんと話すとき、そして、そういう人向けに文章を書くときには、なるべく使わないようにしています。使うとかっこいい(ような気がする)し、相手も分かったような顔をされることが多いのですが、数分後に議論が噛み合わないことに気がついて、時間を無駄にすることが往々にあるからです。そこでちょっと面倒ですが、言葉が長くなっても簡単な日本語にするか、例え話を交えて話すようにしています。ただ某戦略ファームのように、横文字フレーズを無理矢理「かっこよく短い」日本語にすると、むしろ分かりにくくなる場合もあるので、要注意です(例:キャッシュフロー=資金流、とか)。


 またその正反対で「わかりやすい言葉」にも気をつけています。わかりやすい言葉、イメージしやすい言葉も、横文字フレーズ同様「わかった気にさせる言葉」であることが多いからです。例をあげると「見える化」。これはローランドベルガーの遠藤さんが流行させた言葉で、現状を可視化することで、問題を素早く認識し、アクションにつなげようという意味だと僕は理解しています。「見える化」は特に中高年層に浸透している言葉だと感じますが、使っている人を見ていると字面通りにしか理解していない。つまり「現状を可視化する」ことにのみ注力して、「なぜ可視化するのか」を考えていない人が多いのです。「そんなの遠藤さんの本を読んでいないからでしょ」という一言で片付けるのは簡単です。ただ、わかりやすい言葉こそ、伝わりやすく、使われることも多い。だからこそ注意しないと、誤った理解を広めてしまい、結果的に意図と反した動きを作ってしまうことがあるのです。


 まあ、あまり気にしすぎると、「無口で不気味な人」になってしまうので、程々にするのがよさそうです。